人間姫

 
1ゆたかなみなとのくに

うみにめんした ちいさなくにが ありました。
ちいさいけれど たくさんのひとが おとずれるので とてもゆたかな くにでした。
みなとから おしろにのびる おおどおりには いろんなおみせが あります。

きれいな ぬのがある おみせ。
しんせんな さかなをうる おみせ。
ほうせきや とけいの おみせ。
おおどおりは いつもたくさんのひとで にぎわっています。


2リサのはなや

そのなかでも ひときわ にぎわう おみせがありました。
リサと リサのおとうさんが いとなむ はなやさんです。

リサは とてもかわいらしく あかるく げんきなので みんなにすかれていました。
リサのえがおを みるために たくさんのひとが はなをかっていきました。
「きょうも たくさんの はながうれたね おとうさん」
そういって リサはまんめんのえみを うかべました。


3はまべでうたうリサ

はなやをしめると リサは みなとのほうへ いきます。
そして はまべで うたを うたいます。
うたにつられて さかなやカニたちが あつまってきます。
すきとおった リサのこえに さかなたちは はくしゅかっさい。
うたいおわったリサは うれしいきもちで いえにかえるのでした。


4バートンソリュー

きょうも はなやには たくさんのひとがきます。
しかし にぎわっていたみせが きゅうに しずかになりました。
おうじ バートンソリューが あらわれたからです。
バートンソリューは とてもいじわるで まちのひとには きらわれていました。
「おまえを オレのよめに してやる
 オレのよめになれば まいにち あそんでくらせるぞ」

リサは あそんでくらすよりも はなやではたらくほうが たのしいとおもいました。
「いいえ わたしは あなたのおよめには なりません」
そういうと バートンソリューは おこって みせをめちゃくちゃにしました。
「オレの いうことを きかないやつは このくにには いらない!」

リサのおとうさんは ろうやに とらえられ 
リサは このくにから でていくように いわれてしまいました。


5かなしむリサとにんぎょのウォルト

かなしむリサは さいごに はまべでうたおうと おもいました。
リサがうたうと さかなたちは いつものように はくしゅかっさいします。
しかし リサは うれしいきもちには なれません。
すると うみから にんぎょのおとこのこが あらわれました。
「はじめまして。 ぼくは うみのくにの おうじ ウォルト
 キミの うたごえは とてもすてきだね」

「ありがとう ウォルト。 でも わたしは このくにから おいだされたの」
なみだをポロポロと こぼすリサに ウォルトがいいました。
「それなら うみのくにへ くるといい」


6もりのまじょ

リサは ウォルトに にんぎょになる ほうほうを ききました。
にんぎょになるには もりのまじょに おねがいすればいいのです。
リサは ふかいもりのおくにある まじょのいえを たずねました。

「まじょさん わたしを にんぎょに してもらえませんか」
まじょは こういいます。
「その きれいなこえと こうかんだ」
リサは なやみました。
うみのくにへいったら ウォルトのために うたいたいとおもったからです。
「ほかに なにか こうかんできるものは ありませんか?」
「ならば おまえのからだと こうかんだ」
まじょはそういうと リサを ちいさなさかなのすがたに かえてしまいました。


7みにくいさかなのリサ

まじょのほうきで うみまでつれていってもらったリサ。
まじょに おれいをいい リサは うみのくにへいきました
うみのくにのいりぐちには おおきなもんがありました。
リサは にんぎょのへいたいに いいます。
「ウォルトにあいたいの かれがどこにいるか わかりますか?」

すると にんぎょのへいたいは リサに ぶきをむけて いいました。
「おうじには あわせない。 キミは みにくいさかなだからだ」 

リサが へんしんした すがたは 
うみのくにには はいれない みにくいさかなだったのです。


8いわにはさまったサンディ

リサがかなしみながら およいでいると
いっぴきのザリガニが いわにはさまっているのが みえました。

「おーい、そこのキミ どうか ぼくをたすけておくれ」
リサは ちいさいからだで せいいっぱい いわをどけました。
「たすかったよ おれいに なにかしてあげられるかい?」
「わたし ウォルトにあいたいの」
すると ザリガニは じまんげにいいました。
「おやすいごようだ」


9ウォルトとたのしいひび

リサが しばらくまっていると ザリガニのサンディは ウォルトをつれてきました。
ウォルトは みにくいさかなの リサにおどろきました。

しかし えがおでこういいます。
「すがたは かわっても キミのうたごえは かわらないさ」
リサはよろこび ウォルトのために ずっと うたをうたいました。 
となりでみていた サンディは はさみで カチカチとあいのてをうちました。


10つかまったウォルト

まいにちのように リサは ウォルトとあって うたをうたいました。
しかし たのしいひびは ながくはつづきませんでした。
ウォルトが みにくいさかなと あっていることが ばれてしまったのです。

サンディがあわてて そのことをリサにしらせました。
「たいへん! どうすれば たすけられるかしら」
サンディは すこしかんがえて こういいます。
「うみのまじょの ちからを かりるしかない」


11うみのまじょ

リサたちは うみのそこふかくにある うみのまじょのいえを たずねました。
「まじょさん どうか ウォルトを たすけてください」
まじょは なにもいわず ちいさなこびんを リサにむけました。

すると リサのくちから キラキラとひかる すながでてきました。
「おまえから しあわせをもらった おうじをたすけよう」
リサとサンディは よろこび まじょにおれいをいいました。


12きおくをうしなうウォルト

まじょのいえをでて しばらくすると 
なにごとも なかったかのように サンディが ウォルトを つれてきました。
しかし ウォルトは リサのことをわすれていました。
「キミは みにくいさかなだから ここにいてはいけないよ」

ウォルトはそういうと すぐさま しろへ かえっていきました。

リサは そのことに ひどく かなしみました。


13サンディとうみのまじょ

リサの かなしむかおに いてもたってもいられなくなった サンディは
もういちど まじょのいえをたずねました。

「まじょよ どうにか おうじの きおくをもどしてくれないか?」
そういうと まじょは こういいかえしました。
「おまえを しねないからだにする それでもいいかい?」

サンディは すぐにうなずきました。

すると サンディのくちから くろいすながあふれました。

14しあわせのこびん

まじょは サンディからうばった くろいすなを 
じぶんに ふりかけました。
「しねない からだは とてもつらいぞ」

まじょは そういいのこし やすらかにしにました。

サンディは まじょは ずっとひとりで しぬこともなく 
くらしてきたのだとしり とてもかなしいきもちに なりました。

だれもいなくなった まじょのへやで サンディは
リサからうばった こびんのなかの しあわせを 
しんだまじょに はんぶん ふりかけました。


15しあわせなひび

かえってきた サンディはおちこんでる リサにいいました。
「まじょに たのんで おうじの きおくをもどしてもらったよ」
リサは おどろきました。

さらにサンディは もちかえった しあわせのこびんを
みにくいさかなの リサに ふりかけました。

すると リサのすがたが にんぎょ になったのです。

そこへ きおくをとりもどした ウォルトが あらわれました。
「リサ! さっきは ひどいことをいって ごめんよ
 また うたを きかせてくれないか」

リサは いつまでも そのすきとおったうたごえで うたいつづけるのでした。



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